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『ノルウェイの森』

村上春樹 著
上・下とも税抜514円(登戸の文教堂で買ったはず)

久しぶりに、心から良かったと思える作品。
ノルウェイなんか行かない、日本の一大学生のお話です。
主人公のワタナベ君はただ一人の友人キズキに先立たれ、キズキの恋人と過ごしています。
彼は彼女のことがたぶん好きなんだけど、くだんの女性直子は少しずつ心がこわれていく
ほんの数年の物語。

以前どこかで読んだことの受け売りだけれど、
村上春樹の作品は登場する料理が愛情のバロメーターのような所があります。
誰かのためにちゃんと考えられて調えられた品々は、けっして特別なものではないけれど
その人への愛情が伝わってくるし、
作者村上春樹自身の手際のよさも伺えます。きっと、この人はお料理が上手だろうと。

それから、作者自身が投影されているであろうワタナベくん(投影されている、は私の解釈)って
とても真面目な学生なんです。
平日に大学の図書館で復習をしているから、土日は出かけることができる
と考えているような、きちんと丁寧に生きている感じが素敵でした。

友人の死を上回るような大事件はおきないのに、ワタナベ君と直子さんは惹かれあい
ワタナベ君はその愛情とは別に行きずりの関係もあり、その事実を正当化もせず
日々を淡々と過ごしながら、直子さんへの気持ちを募らせていく。

最後にはワタナベ君はいろいろなものを卒業していきます。
さびしいことだけれど卒業していくのです。
そこに至るまでを淡々としかも熟考を重ねながら過ごしているワタナベ君を
なんとなく応援したいような、妙な気持ちで読み終えました。

静かで、一本筋が通っていて、生活リズムをきちんときざんでいる読書家。
ワタナベ君が現実にいたら、好きにならずにいられないだろうと思いました。
by karadanokoe | 2007-06-16 19:09 | 立ちよみ時どき座りよみ
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