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『華栄の丘』

宮城谷昌光
ブックオフにて300円

歴史物を読みたい気分だけど長編は苦手な私。
ちょうど一冊にまとまっていたのでこの本を選びました。
中国史については大学受験のために勉強した程度。

群雄割拠というのでしょうか、いまの中国に国が乱立していた時代の
小国の宰相を描いた作品です。
物語はいきなり成人している主人公の描写から始まります。
臣下も主君を選び、主君の縁者も多いので代わりはいくらでもいて
暗愚と見られれば暗殺もしばしばだった時代に
君臣が互いに分をわきまえて美しくまじわった国のお話。
実在の人物を描いていますし、舞台となる宋(そう)が安定した国家であったのは
事実なのでしょうが、ちょっと御伽噺を読んでいるような気分になりました。

主人子・華元(かげん)の戦略は明快です。
戦いは最後に参加したものが勝つ、騒乱を起こして国をのっとるのではなく
昨日までは敵であった者にも寛恕の精神で接することで
恨みの連鎖をたちきるというもの。

対外的には自国が小国であることを認め、宰相である自分自身が人質になっても
国を救おうとする華元(かげん)の心の通った怜悧さもさることながら、
そのような宰相に恵まれた自分の幸せを忘れることなく
華元を取り戻すためには賄賂も厭わないと思える主君・文公の賢さも
印象的でした。
また文公は前君主の専横に耐えて玉座をモノにしたあと、
王としての力に酔うことなく、人を責めずに国を統治しました。
なかなかできないことだと思います。

ひとつの国の一人の宰相が、主君にも民衆にも同輩にも
ふかく愛された奇跡の物語です。
by karadanokoe | 2008-01-28 22:09 | 立ちよみ時どき座りよみ
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